やれたかも委員会?

あの日、あの場所でもうちょっと勇気があったなら

というもの。やれたかも委員会。

やれたより手前の、もしかしたら両想いで、付き合えてたんじゃないの。という話。

私の地元では夏に結構大きな花火大会がある。

小さい頃は家族や親戚で夏のイベントとして楽しんでいた。

どの年齢かを皮切りにして、子供はそういう類のイベントを友達あるいは恋人と過ごすようになってゆく。親離れとはかくして。

私はそれが中学生の頃にひょんな形で訪れた。

地元の学校に通っていない私にとっては、この花火は微妙なイベントであった。地元の友達は地元の学校の面々と花火に行くからだ。他のコミュニティで仲の良い友達もいたものの、地元の中学のコミュニティというのは強固なものがあり、ヤンキーの仲間意識からかそこに入るのは居心地の悪さがあったのだ。そんなことで、私は特に一緒に行く友達もおらず、その日もどこか寂しい気持ちですごすのが毎年の恒例であった。

そんな時にメールが一本。

元カノからである。

彼女は地元の人間ではなく、かつて少し遠距離恋愛をして、私の方がフラれた、そういう相手。思いもよらない連絡に戸惑いつつ、喜びつつ、そういうそぶりを感じられ無い様に素気なく返事を返した。「久しぶり。」

彼女は祖父母が私の地元の近くにいたみたいで、なんとなく連絡してみたとのこと。一方の私にとっては、花火大会の日に連絡が急に来たという状況。彼女はその花火のことすら知ら無いのですから全く他意なく連絡したに違いないのに。

フラれた側の人間としてプライドも持ちたい気持ちがありましたが、気づいたらメールしていた。「今日花火大会一緒にいかない?笑」

笑にこめる最大限のプライド、もし断れても、冗談だと嘯くための構え。ダサ過ぎる、だけどこれがフラれた側の最大の抵抗であった。

彼女の祖父母の家は遠距離をしていた彼女と僕の僕側に近いってだけで、そんなに近くなかったもんですから、本当に多分来れ無いんだろうという気持ちもあった。しかしきたのは思いの外行けそうな返事。「どこに行けばいいの?」

やった、デカすぎる、なんとなく鬱っぽいこの花火の日に、まだ未練たらたらの元カノからの突然の連絡、そして花火デート!?よほど日頃の行いが良かったのか。

親には行くはずもない友達と花火に行くと伝えて家を飛び出した。待ち合わせ場所の駅までは本当に一瞬で着いた気がする。

そこには、元カノがいた。

なんとも現実とは思えない風景であった。彼女とは遠距離恋愛をしており、私の地元には全くフィットしない格好で、見た瞬間やっぱり好きだなと思わせてくる、その人間がいることはリアルでなかった。

田舎育ちの私は周りの目を気にしつつ、自転車二人乗りして花火大会へ走った。その間に話した内容なんかは何も覚えていない。ただひたすら、二人乗りをしてるからかもしれないがドキドキしていた。

地元民しか知らないポジションから花火を見ようとしたが人が多く、そこまで特別感を演習できなかったが、彼女は喜んでくれた。少なくとも私の目にはそう見えた。

都会の生活で私より精神的に年上な彼女に田舎の地元を見せる恥ずかしさもあったが、なによりも2人で花火を見れていること、自分が花火大会というイベントに女の子と2人で参加しているという事実は僕の脳をおかしくした。

楽しい時間とはあっという間で、花火大会は終わりを告げた。

帰りは人混みで2人並んで歩いた。はぐれない様に、とぎこちない言い訳をして手を繋いだ。夏の暑い日に汗をかきながら、人混みでなくなっても手は離さなかった。

彼女を駅でまっている祖父母のところまで送り届けて、ふと現実にかえる。ああ、ここは私の地元だった。

その後それでもプライドのある私から積極的に連絡をすることもなく、彼女から連絡があるわけでもなくこの恋は終わりをつげた。

もしらあの帰り道、やっぱり好きだという気持ちを伝えてたなら、その後メールでも気持ちを伝えたなら、私の人生は大きく変わっていたかもしれない。大袈裟ではあるが。

少なくともその後の恋愛経験が今の人格を形成しているのは間違いないのだから。

一般に女性の方が精神年齢が高いというが、それは間違いないだろう。女の人に男は一生涯育てられていくに違いない。